音選TaMaGo What's New Jazz Classic

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 ハービー・ハンコックの70歳記を念アルバムは記念碑と呼ぶべく作品。“世界規模での協力がもたらす平和への美しき道筋の威力と素晴らしさを示す試みです。”と語られた今作は、世界各地で活躍するミュージシャンが集結して作り上げた国際的音楽プロジェクト。「イマジン・プロジェクト」というタイトルが示すように、ジョン・レノンによる「イマジン」が描き出す世界—“all the people living life in peace.”という想いを祈念するアルバムになっている。
 
 タイトル曲とも言うべく「イマジン」の他にもビートルズ「トゥモロウ・ネヴァー・ノウズ」、ボブ・ディラン「時代は変る」、ボブ・マーリー「エクソダス」といったポップス/ロックの名曲が散りばめられている。そして興味深いのが各アーティストのテリトリーでのレコーディングしていること。各地の音楽的要素だけではなく空気を感じ、より深いメッセージを収めている。

 さあ、各曲を聴いていこう。「イマジン」シール・ピンク、コノノNo.1、そしてジェフ・ベックなどの豪華メンバーによる。叙情的なピアノで静かに幕を開け、祈りを捧げる様な歌声。中盤からは心地よいグルーヴに乗って平和な世界が描かれる。「ドント・ギブ・アップ」はピンクとジョン・レジェンドによるデュエット。ピーター・ガブリエルの佳曲が美しく甦る。「テンポ・ジ・アモール」はサンパウロにて録音が行われて、ラテンフレイバーが色濃く漂う。「スペース・キャプテン」テレク・とラックスとスーザン・テデスキによってソウルフルに、「ザ・タイムズ、ゼイ・ア・チェンジン」はアイルランドによる録音で、これもまた土地の要素を強く感じることが出来る。「ラ・ティエラ」はラテン界のスーパースター、フアネスが情熱的に歌い上げる。ハービーの熱気溢れるソロも聴きどころ。ティナリウェンとロス・ロボスによる「タマタント・ティレイ(死はここに)/エクソダス」は、異空間へと導かれるような不透明なサウンドで気怠くも気持ち良くはまっていく。「トゥモロウ・ネヴァー・ノウズ」デイヴ・マシューズがフィーチャーされ、エクソダスからの流れをうまく汲んだ素晴らしいサウンドが構築されている。「ア・チェンジ・イズ・ゴナ・カム」はジェームス・モリスンの歌声で力強くメッセージが語られる。そして最後を締めくくるのは「ザ・ソング・ゴーズ・オン」。ハービーのサウンド融合の極みとも言うべき味わい深い曲に仕上がっている。ラヴィ・ シャンカールの娘アヌーシュカ・シャンカール、チャカ・カーン、ウェイン・ショーター、更にインドの多彩なミュージシャンが参加し、インドのムンバイで録音。消してNYやロスのスタジオでは感じる事の出来ないスピリット、匂いを感じる事が出来る。

 2007年には「リヴァー〜ジョニ・ミッチェルへのオマージュ」で透明感溢れる素晴らしいサウンドを構築。ここでも多彩なボーカルゲストを迎えプロデューサーとしての手腕を発揮し、グラミー賞アルバム・オブ・ザ・イヤーを獲得している。満を持してのオリジナルアルバムは、それに勝るとも劣らない完成度を誇っている。力強いメッセージをもったコンセプチュアルの強い作品でありながらも、エンターテイメント性、芸術性をより引き上げる大作は多くの人に感動を届けるだろう。


Sony Music ハービー・ハンコックPage
ハービー・ハンコック

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KBSトリオライブ・レポート
 自身の“ケンズ・トリオ”や山下洋輔フル・バンドなど、様々なシーンで大活躍している、堅実な実力派ベーシスト金子健。彼はこのほど“KBSトリオ”を新たに立ち上げたが、その彼らの新作『What am Ⅰhere for』の発売記念ライブが、6月11日に水道橋のライブ・スポット”東京倶楽部“で行われた。このトリオ、ギターが加わったドラムレス・トリオで、最近は余り多くないのだが、元々ピアノ・トリオの原型とも言えるもの。オスカー・ピーターソン・トリオなど、この編成による素晴らしい作品も数多く残されている。
KBSトリオの面々は、実質リーダーの金子の他、20年以上になる本場NYでの音楽生活にピリオドを打ち、つい先日日本に拠点を移したギターの井上智。アート・ブレーキー&JMやレイ・ブラウン・トリオ、そして自身のユニットなど八面六臂の活躍で知られ、日本でも人気の高い俊才ピアニスト、ベニー・グリーン。この3人の頭文字を取ったスペシャル・ユニットは、オスカー・ピーターソンの後継者とも呼び声の高い人気者、ベニー・グリーンの登場とあって、さほど広くない”東京倶楽部”は予約で超満員状態。
 午後の7時過ぎに3人が登場、アルバムにも収録されているハロルド・アーレンの小唄“アズ・ロング・アズ・アイ・リブ”で、ステージは幕を開ける。ベニーと井上とは長年の音楽仲間、アイ・コンタクトで巧みなフレーズをスインギーに紡いで行き、その2人を金子がボトムでしっかりと支えていく。実にスムーズで心地良い、快適なスイング感で会場が包まれる。続いてアカデミー賞受賞名品“いそしぎ”とアルバム・タイトルにもなっているデューク・エリントンの佳曲”ホワット・アム・アイ・ヒア・フォー“と収録曲が奏されるが、全員が確固としたテクニシャン揃いで、様々なナンバーの断片なども巧みに、センス良くアドリブに織り込み、スイングする愉しさを品格良く味わせてくれる。ビル・エバンス~キース・ジャレットと言う、内省・思索タイプの抒情・知性派ピアノ・トリオの系譜が主流のこの時代に、あくまでもスイングすることに賭けるこのユニットの潔さ、なんとも心地良いもの。この他にも目まぐるしい急速テンポで奏される”神の子はみな踊る”や、ガレスピーの強靭なラテン・タッチ・ナンバー“フィエスタ・モジョー”など、満与のファンから期せずして歓声が湧き上がる快演が続く。終わってみれば実に満ち足りた思いで、会場を後に出来た。金子とベニーはライブでは、今回が初めての顔合わせ。しかし両者の息もぴったりで、トリオは見事に機能していた。改めて実にいいトリオですよ。

text by 小西啓一

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